多くの人が忙しさの中、「動きを止める」ことを忘れています。
特に、休日のピーク時ともなると、いかにテキパキ効率よく動くかのほうが重要と考えてしまうものです。
けれども、慌ただしい仕事のやり方に慣れてしまうと、全てが「流れ作業的」になってしまいます。
例えば、「ありがとうございました」の「ありがとうござ」のあたりで、
すでに体が別の方向を向いてしまうことなどないでしょうか?
先日、ある飲食店の視察を兼ねて訪れた時、
「あり」の部分だけしか聞き取れず、それ以降が聞き取り不可能な言葉になっている店員さんがいらっしゃいました。
「あり」の後、すぐ次の行動に移っていたので、忙し爽な印象だけが残ってしまい、声もかけづらい雰囲気でした。
これでは残念ながら、なんのための「ありがとうございました」なのかわかりません。
せっかくテキパキと仕事をやっているのにも関わらず、「雑」な印象を与えてしまっているのです。
そこで、このスタッフさんに、お客様が帰る時など挨拶するときに
「お客様の背中を今より3秒間長く見守る」ように伝えました。
そう、たった3秒。
でもたったこれだけで、感じが良くなるんです。
思いは目に見えない。けれど必ずお客様に伝わります。
忙しい時の3秒って、それこそ意外なくらい長く感じられるものです。
それでも、挨拶の後に「1・2・3」とカウントしてから次の作業に映ることを徹底してもらいました。
実は、このようにすることで2つのメリットが生まれるんです。
1つは、お客様の背中を3秒見守ることで、お客様の背中に「ありがとう」のビームを送れます。
お客様の目に直接見えているわけではなくても、丁寧に見送られると、お客様はそれをちゃんと感じ取ってくれます。
中途半端な挨拶をして見送る場合との差を、お客様は感じ取っているわけです。
2つ目は、背中を3秒見守ることで、余韻が生まれることです。
お辞儀をしてサッと後ろを向くと、なんだか事務的な感じがしてしまいますが、3秒間の余韻を持つことで、
お客様の心に余韻を残すことができます。
これが「残心」です。
このちょっとした余韻が、心地よさを生むのです。
コレは実際にやってみると、思った以上に大変です。
忙しい時に3秒間も立ち止まって入られない、その3秒間を使って、他のお客様の待ち時間を短くしたい、
というご意見もあるかと思います。
確かにこの3秒を無くせば、次の作業に3秒早く取り掛かることができます。
しかし、ドリンクが3秒早く提供されることよりも、3秒間長く見送られることの方が、
確実にお客様の満足度は高まります。
また、忙しい時に挨拶に3秒間も使えないというのは、正しいようで間違っています。
忙しいから挨拶を省略しても良いという発想は、
忙しいのなら未完成なサービスでも構わないという考えに他ならないからです。
お客様は、挨拶を含めたサービス全体にお金を払っているのです。
実は、お客様の背中を3秒見守ることは、簡単なようでやってみると色々と問題が起こるものです。
だからこそ、この3秒間があるかないかによって、サービスの「質」が大きく変わってくるとも言えます。
私が先ほど紹介した飲食店でも、最初はなかなかこの3秒間を徹底することができませんでした。
しかし、一人ができるようになり、また一人、そしてまた一人、と増えてくると・・・
お客様からの感謝の言葉が増えてきたのです。
あなたの挨拶は、おざなりになっていませんか?
忙しいからと言って、挨拶をしながら次の作業を始めていませんか?
もし、少しでも思い当たる節があるなら、お客様の背中を3秒間見守るようにしてみてください。
たった、コレだけでお客様があなたをみる目が変わってきます。
そして何よりも、あなた自身に「心のゆとり」が出てくるはずですから・・・^^。