女性コンサルタントのブログ

上顧客のお客様と初めてのお客様、どんなことに気を付けていますか?

あなたは、”売上の8割は既存顧客の2割から”という言葉を耳にしたことはありますか?

これは、全体の2割にあたるリピーターのお客様が売上の8割を作っているということです。

 

CAとして新人訓練を受けていた時も、ご利用回数の多いステータス会員のお客様について学ぶ時間が設けられていました。

年間、どれくらいご搭乗いただいているのか、そのお客様によって企業としてどれほど支えられているのか、

また、それに対しての機内での特別なサービス等々、新卒入社の私にはとても新鮮な情報でした。

 

しかし、新人でありながらもふと、思ったことがあります。

もちろんリピーターのお客様は大いに感謝が必要。でもそうは言っても、たった一度ご利用のお客様だって、

大切なお客様には変わりがないはず・・・。と。

 

補足しますと、会社としても「すべてのお客様を大切に!」というスタンスであるのは当然のことです。

ですが、訓練での「上顧客のお客様を大切に」という伝え方が言葉足らずであったり、

受け取る側の解釈によっては、不要な区別をしてしまうのではないかと危惧したのです。

利用頻度やお支払いいただく金額によってご提供できるモノやサービスに差はあってもいいと思うのですが、

差をつける必要のないところ、つまり接客や心遣いにまでそれが及ぶことになってはいけないと感じたのでした。

 

常連のお客様だって始まりは1回目のご利用だからです。

その1回目がおろそかならば、次はないですよね。

引き続きご利用いただけるかどうかは、1回1回の積み重ね、

さらに言えば、その1回の中の一瞬一瞬の積み重ねです。

 

たとえ一度きりのご利用だったとしても、

「な〜んだ。丁寧に接客したのにリピートしてくれないのか」ではなく、

「たった一度のご利用だったけれどご満足いただけただろうか・少しでも喜んでいただけたのなら嬉しいな」

という発想を持つのが接客のプロ・・・と思うのは私だけでしょうか?

 

 

機械的な対応をしていませんか?

もちろん、マニュアルで決められた通りの対応をし、機械的に会計を済ませ、とりあえずクレームにならなければそれでいい、

そんなことを思いながら接客していないでしょうか。

 

もし、いつもの機械的な接客に「特別感」を演出したいのであれば、とっておきのタイミングがあります。

それが、「ポイントカード」の時です。

 

「ポイントカードはお持ちですか?」から始まり、こちらが提示すると「いつもご利用ありがとうございます」と続きます。

「カードを持っている=リピーター」という図式が成り立ちますから、

カード返却時に「いつもご利用ありがとうございます」と伝えるようにマニュアルで決めておけばいいのです。

そうすれば「いつも」というキーワードの中に

「貴方様がリピーターのお客様であることを我々は知っていますよ」というニュアンスを含ませることができるのです。

 

ですが、この言葉を口にするときに、感謝の気持ちが無かったら、本末転倒です。

そうです、決められているから言うだけ。

カードを提示されたから自動的に「ありがとうございます」と言っただけに過ぎません。

これでは、何も伝わりませんよね。

お客様だって見てれば、「ああ・・・。言わされてるのね・・・」と感じるでしょう。

 

せっかく特別感を感じさせる言葉を発するのであれば、そこに気持ちを乗せましょう。

具体的には、「目を見て伝える、笑顔で伝える、両手で丁寧にカードを扱う・・」などです。

顔も見ずに、ボソボソと消え入るような声で「いつもありがとうございます」と言うのであれば、

マニュアルで決めた意味さえありません。

 

「いつも」と言う言葉は言い方や伝え方によっては、とてもお客様に響く言葉なのです。

お客様の心に届く」いつもありがとうございます」を使いましょう。

 

 

CAとして乗務していたとき、上顧客のお客様に日頃の感謝やその日のご搭乗に対する御礼を伝えるシーンがありました。

お名前も分かっていますから、

「●●さま、いつもご搭乗いただきありがとうございます。本日もご出張でしょうか。

どうぞ機内ではごゆっくりとお過ごしくださいませ」と言うような内容です。

特に決まった言葉はありませんので、その日の天候やお客様の様子に合わせた言葉を選びます。

 

すべてのお客様ではありませんが、「名前をお呼びすること」、「お座席まで伺ってご挨拶すること」は、相手に

「特別感」を持ってもらいやすいです。

 

また、詳細は省きますが、ステータス会員のお客様に対してサービス上の配慮というものもありました。

これは接客側からすると「いつものご利用に対するせめてもの感謝の気持ち」です。

 

例えば、飲食店でもお得意さんだけに出す「裏メニュー」があったり、

おまけのデザートがついていたり・・・というサービスを受けたり見たりしたことはありませんか?

それが当事者だった場合には、やはり嬉しいものですよね。

 

「特別な扱いを受けた」という事実は、誰にとっても嬉しいものです。

 

しかし、ここで気を付けて欲しいのは、

「上顧客の常連のお客様に喜んでもらえて良かった!またリピートしてくれたらな〜!」とか、

「今日もいい接客をしたぞ!」という気持ちだけで終わらせないでくださいね、ということです。

 

目の前にいらっしゃるお客様が喜んでくださると接客した側はとても満たされます。それ自体は悪いことではないですし、

むしろ明日への「活力」にもなります。

 

ですが・・・

考えていただきたいのは、さらに一歩踏み込んだサービスです。

 

店内にいらっしゃるのは上顧客の常連のお客様だけでしょうか?

他にもお客様はいらっしゃるはずです。

 

冒頭にも申し上げたように、

「上顧客のお客様も初めてご利用いただくお客様も、すべてのお客様を大切にする」そのような視点が欲しいところです。

 

上顧客のお客様の特別感を演出しつつ、他のお客様への配慮も欠かさない

「常連の上顧客のお客様を大切にする、特別なもてなしをする」それを周りにいらっしゃるお客様が

どのように見ているのか、という視点を持つことが大切です。

たとえば、上顧客のお客様に特別なサービスを提供する際、

それを目の当たりにした他のお客様がどのように感じるかを想像したことはありますか?

 

もし、その特別な対応があからさまであったり、他のお客様をないがしろにするような形になっていたら、

「このお店は常連じゃないと大事にされないのか…」という印象を与えかねません。

 

こうした無意識の“区別”が、新規のお客様がリピーターになる機会を奪ってしまうこともあります。

 

では、どうすれば上顧客のお客様を大切にしつつ、新規のお客様にも心地よい体験を提供できるのでしょうか?

 

ひとつの鍵となるのが、「誰にでも伝わる温かさ」を意識することです。

 

上顧客のお客様には特別な言葉や対応を用意しつつも、周りにいるお客様にも

「ここは気持ちの良い接客をしてくれるお店だな」と感じてもらえるような雰囲気づくりを心がけるのです。

 

たとえば、常連のお客様に「●●さま、いつもありがとうございます」と笑顔でお伝えした後、

新規のお客様には「ご来店ありがとうございます。初めてのご利用ですか? 何かご不明点があればお知らせくださいね」と、

さりげなく気を配る。

 

 

また、上顧客のお客様の対応をする際にも、それを「特別扱い」として強調するのではなく、

自然な流れで提供することが大切です。

 

例えば、高級レストランでは常連のお客様にはさりげなくお好みのドリンクを提供したり、

前回の会話を覚えていて「先日お話しされていたお料理、本日もご用意できますよ」とお伝えすることがあります。

 

しかし、それはあくまで会話の流れの中で行われ、

他のお客様が「私は特別扱いされていない」と感じるような演出にはなりません。

 

 

つまり、「あの人はVIPだから」と特別感を誇示するのではなく、

「ここにいるお客様すべてを大切にしている」という雰囲気を醸し出すことが、

リピーターを増やし、新規のお客様にも安心感を与えるポイントなのです。

 

接客とは、一度きりの対応ではなく、お客様との“関係性”を築くこと。

そして、その関係性は「特別感」と「平等感」の絶妙なバランスの中で育まれていきます。

 

上顧客の特別感を大切にしながら、新規のお客様にも温かさを届けること。

これこそが、本当の意味で“すべてのお客様を大切にする”接客の在り方ではないでしょうか。