女性コンサルタントのブログ

すんなりと聞き入れてもらえる「お願い事」の伝え方

機内では禁止事項が多くあるため、お客様にご協力を仰ぐ場面がたくさんあります。

例えば、機内は全席禁煙ですから、お化粧室で喫煙することはできません・・・。

他にも、禁止された電子機器を使用することや座席ベルトの着用、

テーブルやリクライニングシートをもとの位置に戻さなかればいけないこと等々・・・。

 

保安上の観点から、過度の飲酒等による暴言・威嚇・性的嫌がらせ、

乗務員の業務の妨害などは航空法で禁止されていますので、

違反者には罰金が課せられることもあるのです。

 

ですが、お客様にそのままストレートにお伝えすると一方的に感じられることがほとんどなので、

「皆様のご理解とご協力をお願いいたします」

と「依頼ベース」でお伝えするようにしています。

 

このような際に、「妊婦だからシートベルトはしない!」と拒否されたケースや、

座席のリクライニングを戻すよう依頼したら「大クレーム」になったケース、

ドア付近の手荷物の収納をお願いしても頑なに聞いてもらえないケースなどもありました。

 

 

ただ、これらをお客様の「迷惑行為」だと結論づけるのは、正しくないのです。

 

お客様が意図的にルールを破ろうとしたのではなく、

CA側の依頼の仕方に問題があった可能性も高いのです。

なぜなら、私たちの伝え方次第で、結果は大きく変わるからです。

 

 

「非言語」で相手の反応は変わります

 

コミュニケーションには5つの要素があります。

それは・・・・

言葉・顔の表情・ジェスチャー・身体の姿勢・声のトーンです。

 

言葉を言語コミュニケーション、それ以外は非言語コミュニケーションと言います。

 

人がコミュニケーションを取る時、言葉でコミュニケーションしますから、

お客様の気分を害さない適切な「言葉選び」は必須です。

クッション言葉や敬語はお願い事をするときこそ、「言葉選び」は重要なのです。

 

 

ところが実際は、言語よりも「非言語」で伝わる印象で、受け取る側は解釈を決定しているのです。

特に顔の表情は重要です。

表情は嘘がつけませんから誤魔化しが効きません。

「笑顔は心の扉をノックする!」という重要な「表情」なのですが、

新人の頃は、実際にうまく笑えないCA訓練生も確かにいました。

 

ですから、もしあなたがお客様にお願いしても

なかなか聞き入れてもらえない・・・というご不安があるのでしたら、

まずは、あなたご自身がご依頼するときにどんな顔をしているのか、

動画撮影してみることをお勧めします。

 

わたくしも、就活サポートでパイロットやCAを目指す学生の面接練習をする時は、

必ず動画で自分を見てもらいます。

 

なぜなら、案外自分の話す癖や表情に気づいていない方が多いからです。

それでもお客様にお願いを聞き入れてもらえないことが続くならば、ぜひ表情だけでなく声も確認して下さい。

きつい言い方をしている人は、語尾が強く、話すスピードが早すぎる場合もあります。

 

 

お願いする理由を理解できていますか?

 

そして最も多い原因が、なぜお願いするのか、理由をわかりやすく伝えられていない、ということです。

講義中に「なぜ、それをするの?」と聞くと「わかりません」とあっさり答える方は想像以上に多くいます。

 

着陸前、リクライニングを戻すようにお客様に依頼すると、

「一番後ろなのに、なぜ戻す必要があるの!」と怒鳴られてしまい、

動揺してうまく説明できなかったというケースも過去にはあったようです。

 

禁止事項のお願いは、なぜ禁止されているのか正しく理解しないままお客様にお願いしては、

ご理解いただけないのも当然です。

禁止事項は、「お客様の命の安全を守るため」に決められたことで、営利目的ではありません。

接客の目的は、お客様の安全安心を確保することが最優先。

理由を正しく言えるのが先。その後にコミュニケーションスキルです。

 

 

 

接客業でも介護や看護のお仕事をされている方は、気持ちの優しい方が多いです。

相手の感情を考えすぎてしまい、うまくお願いが伝えられない場合もあるかもしれません。

 

相手が怒りっぽい方の場合、うまく言葉が出ず説明不足になってしまい、

結果相手のためにお願いしたのに、誤解で怒りを買ってしまうかもしれません。

 

それでもお願い事は「なぜするのか」を考えて、

笑顔とやさしい口調でハッキリお願いするしかありません。

逆にそう言えることで、信頼してもらえます。

 

 

「なぜ」には根拠が必要です。

仕事を教えてもらう時に、「これをしなさい」と根拠を示さない上司や先輩も中にはいます。

質問しても根拠を教えてもらえないのだとしたら、自分で「なぜ」の根拠を調べる習慣をつけて下さい。

 

このようにして、お客様の安全安心のために言うのだと覚悟を決めてはいかがでしょうか。

お客様の立場や状況、心の状態に配慮して「アイコンタクトで・誠実に・丁寧に」お願いしてみて下さい。

最初は難しく感じるかもしれませんが、少しづつ慣れてきますから安心して下さい。

 

お客様は、理由がないから納得できていない、だけかもしれません。

接客は、一にも二にも「真摯に対応する」こと。それに尽きます。