新入社員研修のお申し込みも、ありがたいことに続々といただいています。
毎年のことながら、「社会に出る第一歩」に立ち会えるこの季節は、私にとっても特別な時間です。
最近の研修で感じるのは、新入社員の方が「正しい答え」を一生懸命に探していること。
「どう言えばいいですか?」「何が正解ですか?」と。
でも、接客やコミュニケーションの世界に、“正解”はありません。
正解があるとしたら、それはお客様が持っているものなのです。
客室乗務員時代の機内での出来事
客室乗務員時代、忘れられない光景があります。
夜中のフライト。赤ちゃんを抱いたお母様が、涙ぐみながら通路に立っていました。
何か声をかけなければと思っても、「お手伝いしましょうか?」という定型文が、なぜか喉の奥で止まりました。
その時、私が取った行動は、ただ静かにお母様の手から荷物を受け取り、
代わりにあたたかいハーブティーを差し出したこと。
お母様は小さく息をつき、「ありがとう」とだけ言われました。
たったそれだけのやり取りなのに、私の方こそ涙が出そうになったのを覚えています。
きっと、私も子供が産まれたばかりのあの頃の自分を投影していたんだと思います。
その後、会社にお礼状が届き、「あの時はいっぱいいっぱいで、子育てのプレッシャーで押しつぶされそうだった。
何も言わずに、一杯のハーブティーを差し出してくださったCAさんにお礼が言いたい」と・・・。
「言葉」ではなく“察する力”がお役に立てたのなら、うれしい」と感じた瞬間でした。
それは、今でも私の研修の根幹になっています。
ホテルフロントレセプションでの学び
ホテルのフロントでお客様をお迎えしていた頃、チェックインされる瞬間の“空気の違い”を感じ取るのが好きでした。
リゾート目的だと思われるお客様には、これからの楽しい時間を感じていただくように
笑顔で「ようこそ!お待ちしておりました」とお迎えします。
一方で、出張中でお急ぎのお客様には、極力、余計な言葉を省き、最短でスマートに鍵をお渡しする。
その“呼吸を合わせる力”が、安心感や信頼感につながっていくのだろうと思います。
それはもはやスキルではなく、心の温度を合わせるおもてなし。
察する力量が試される瞬間でもありました。
今、研修で伝えたいこと
研修では、「どう言えばいいか」ではなく、「どう感じ取り、どう動くか」を伝えています。
赤ちゃん連れのお客様に「何が必要だと思いますか?」
忙しそうなお客様に「どんな言葉が安心を生むと思いますか?」
問いかけながら、答えを教え過ぎない勇気を持つ。
自ら考え、気づき、行動に変えること。
それが本当の成長であり、プロフェッショナルの第一歩だと思うのです。
そして何より大切なのは
どんな場面でも、会話の始まりは“感謝”から。
「いつもご利用いただき、ありがとうございます」
「お待ちいただき、ありがとうございます」
たった一言が、場の空気を温め、人と人の心をつなぎます。
その小さな積み重ねが、企業の信頼とブランドをつくっていくのです。
さいごに
マニュアルで人は育ちません。
でも、“心を感じる力”を育てることはできます。
新入社員の皆さんが「正解を探す人」から「感じ取って動ける人」へと変わる瞬間。
その姿を見るたびに、私はいつも胸が熱くなります。
そんな人を育てたい。
そう願う企業様のもとへ、この春も伺います。
▼現場で生きるホスピタリティ研修についてはこちら
新入社員は、未来の企業の顔。
だからこそ、答えを教えるのではなく、“感じ取る力”を育てる研修をお届けしています。
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