飛行機の中では、CAによるドリンクやお食事のサービス、機内販売などが行われます。
しかし、それが終わったからといって、もうあとは何もしなくていいという訳ではありません。
私たちCAが欠かさずにしていたことは、「キャビン巡回」と呼ばれる客室内のパトロールです。
接客サービス要員と保安要員としての役目を併せ持つ乗務員として、
常に「安全で快適なフライト」を維持しなければなりません。
そのためには、お客様の様子や機内の状況をしっかりと把握しておく必要があります。
そのような理由から、業務が立て込んでいる時でも、必ず誰か1人は客室内にいるように努め、
通路をゆっくり歩きながら客室を巡回するのです。
ところが、この客室のパトロール、新人が巡回するとこんなことが起こります。
「客室巡回、終わりました!」
と満面の笑みの新人CAから報告を受け、程なくして私も客室巡回を実施しました。
すると・・・
先ほど客室パトロールが終わったばかりだというのに、たくさんのモノが目につくのです。
例えば、お客様のテーブルにある飲み終わったカップや、
「できれば片付けてください」と言いたげにおいてあるゴミ等々・・・。
そして、お客様からは「すみません、コーヒーのおかわりください」
「毛布と枕と日経新聞ください」などと、何かしら頼まれるのです。
そのような時には、
「あれ?おかしいな。さっきの客室巡回は何を見ていたのかな・・・」という気持ちになりました。
きっと、私が新人だった時も、先輩に同じ想いを抱かせてしまっていたのでしょうね。^^(笑)
新人でも、しっかりとお客様のサインをキャッチできる優秀な乗務員もいるので、
あくまでも「新人に多い傾向」という意味ですが、
まだまだ視野が狭く、機内業務に不慣れな緊張から「まずは笑顔で!」ということに注力するため、
お客様を「見ているようで、見ていない」のです。
つまり瞳には景色が映っていたとしても、意識には何も入ってきていないということです。
「お客様をよく見る」ということは・・・
私の言葉で言い換えると、「お客様の発しているサインを取りこぼすことなく拾う」という感覚に近いです。
お客様の方から目を合わせてくださるときは、「頼みたいことがあるから、”気づいて!”」というサインです。
ソワソワと落ち着かないご様子は、何かしらの不具合、不安、不快がある時です。
意図的に通路側に置かれているゴミが入った袋は、「これをさげて欲しい」という気持ちの表れです。
お客様の前に出る時は、お客様のご要望を一掃する
このような気持ちでいることでおのずと歩くスピードもゆっくりになります。
そして、お客様を見る目も、「ただ景色を映すだけの目」ではなくなります。
そうなることで、きっとこれまで見えなかったことや気づけなかったサインが拾えるようになっていくでしょう。
言わずとも自分の想いに気づいてくれる人。
どうにかして、その想いに気づこうと心を寄せてくれる人。
そのような人の存在は嬉しいものです。
それがめぐりめぐって、結局はそのようなことのできるスタッフが、コアファンを増やしていくのです。



