こんにちは、ホスピタリティ経営コンサルタントの関優子です。
接客をしていると、お客様にご協力をお願いすることや、禁止事項をお伝えしなければならない場面は数多くありますよね。
お願いしやすい内容や、見るからに優しそうなお客様であれば、声をかけることも比較的容易かもしれません。
しかし、状況やお相手によっては、
「できれば言いたくない……」
「トラブルになったらどうしよう……」
と、不安やストレスを感じることもあるのではないでしょうか。
しかし、そのような中でも、接客スタッフはお店の秩序や快適性を保たなければなりません。
だからこそ大切なのは、お客様を一方的に動かそうとするのではなく、お客様を味方につけ、快くご協力いただける伝え方を知っておくことです。
その方法を知っていれば、不要なトラブルを避けることができますし、お客様にとってもスタッフにとっても、心地よい時間につながります。
ぜひ、接客現場で信頼される「お願い上手」なスタッフを目指していただきたいと思います。
ポイント① いきなり本題に入らない
会話スキルの一つに「クッション言葉」というものがあります。
たとえば、
「恐れ入りますが」
「あいにくですが」
「お手数をおかけいたしますが」
など、会話の冒頭に添える言葉です。
では、なぜこれらの言葉が“クッション”の役割を果たすのでしょうか。
それは、唐突さを和らげ、相手が話を受け止めるための心の準備を整えてくれるからだと、私は考えています。
ただし、形だけのマニュアルとして言葉を添えるだけでは、十分な効果はありません。
大切なのは、どのような声のトーン、表情、姿勢でお伝えするかです。
気持ちのこもったクッション言葉を使うことで、
「こちらとしても心苦しいのですが」
「お手間をおかけして申し訳ございませんが」
という接客側の想いが、お客様にも伝わりやすくなります。
そうすることで、お客様は、
「軽々しくお願いされているわけではないのだな」
「丁寧に扱ってくれているのだな」
と感じ、快く依頼に応じてくださることが増えるのです。
さらにおすすめしたいのは、お願いごとをするタイミングがご来店直後でなくても不自然ではない場合、クッション言葉の前に感謝や歓迎の言葉を添えることです。
たとえば、
「ご来店いただき、誠にありがとうございます」
「本日はご利用いただき、ありがとうございます」
「いつもご協力いただき、ありがとうございます」
このような一言があるだけで、お願いごとの印象は大きく変わります。
ポイント② お願いは「依頼形」で伝える
2つ目のポイントは、心を感じていただける依頼形を使うことです。
お願いをするときに、
「○○してください」
「○○はやめてください」
とストレートに伝えてしまうと、相手によっては命令されたように感じてしまうことがあります。
接客の現場では、結果的にお願いしている内容が同じであっても、伝え方ひとつで印象が大きく変わります。
たとえば、
「○○していただけますでしょうか」
「○○をお願いできますでしょうか」
「こちらでご対応させていただいてもよろしいでしょうか」
このように依頼形で伝えることで、角が立ちにくくなります。
人は、命令されたり、コントロールされていると感じたりすると、たとえ正しい内容であっても、素直に受け入れにくくなることがあります。
一方で、依頼されたことに対して、
「自分の意思で協力した」
と感じられる流れをつくることができれば、摩擦は少なくなります。
お客様にお願いごとをするときは、ぜひ「依頼形」を意識してみてください。
ただし、ここでも大切なのは、言葉そのものだけではありません。
声のトーン、表情、アイコンタクトが伴ってこそ、依頼形は生きてきます。
いくら丁寧な言葉を使っていても、仏頂面や無表情では、かえって冷たく感じられてしまいます。
「依頼形」+「感じの良い伝え方」
この2つをワンセットで意識することが大切です。
ポイント③ 最後は感謝の言葉で締める
お客様は十人十色であり、価値観や常識も実にさまざまです。
だからこそ、スタッフが店内やお客様の様子に目を配り、秩序や快適性を保つために尽力することが求められます。
そして、皆様も日々感じていらっしゃる通り、それは決して簡単なことではありません。
時にはスタッフのストレスになったり、心が折れてしまう要因になったりすることもあるでしょう。
私はそんな時にこそ、快くご協力くださるお客様の存在に目を向けるようにしていました。
接客側のお願いやルールに応じてくださるお客様は、とてもありがたい存在です。
そのようなお客様に、現場は支えられていると言ってもいいでしょう。
だからこそ、どんなに小さなことでも、ご協力やご快諾をいただいた時には、必ず
「ありがとうございます」
とお伝えするようにしていました。
職業柄、さまざまなお店でスタッフの方の接客を拝見することがありますが、最後の「ありがとうございます」を言わない方は少なくありません。
それは、とてももったいないことだと感じています。
人には、誰かの役に立てたことや、感謝されたことに喜びを感じる気持ちがあります。
自分の些細な行動に対して、スタッフが笑顔で
「ありがとうございます」
と伝えてくれることで、
「また何かあれば協力しよう」
という気持ちになるお客様もいらっしゃいます。
もちろん、見返りを期待して伝える言葉ではありません。
けれど、お礼の言葉が自然に出てくるスタッフと、何かしていただいても無言のままでいるスタッフとを比べれば、応援したくなるのがどちらであるかは明らかです。
お客様への「ありがとうございます」は、惜しみなく口にしましょう。
それは、快くご協力いただいたお客様へだけでなく、たとえ渋々であったとしても、協力してくださったお客様へも同様です。
この小さな積み重ねをスタッフ全員で継続していくことで、お店やスタッフを応援し、味方になってくださるお客様は必ず増えていきます。
まとめ|お願いごとは、伝え方ひとつで印象が変わる
接客現場で、お客様にお願いごとや禁止事項を伝える場面は避けられません。
だからこそ大切なのは、強く言うことではなく、相手の心に届く伝え方を身につけることです。
今回お伝えしたポイントは、次の3つです。
- いきなり本題に入らず、クッション言葉を使う
- 命令ではなく、依頼形で伝える
- 最後は必ず感謝の言葉で締める
この3つを意識するだけで、お客様の受け止め方は大きく変わります。
接客とは、ただ正しいことを伝えるだけではありません。
お客様の気持ちを大切にしながら、必要なことを心地よくお伝えすること。
そこに、ホスピタリティの力が表れます。
お客様に快くご協力いただける言葉がけを、ぜひ日々の接客現場で実践してみてください。

