【2026年10月から義務化】東京都のカスハラ対策で40万円の奨励金|社内研修も対象?

カスタマーハラスメントを受ける接客スタッフのイメージ

「カスタマーハラスメント対策をしなければならないのは知っているけれど、
何から始めればいいのかわからない」

「カスハラ研修を検討しているけれど、費用もかかるし……」

そんな経営者や人事・総務担当者の方に、ぜひ知っていただきたい制度があります。

東京都では、一定の要件を満たす都内の中小企業等を対象に、
カスタマーハラスメント防止対策に取り組んだ事業者へ40万円の奨励金を支給する制度を実施しています。

そして、意外と知られていないのが、

外部講師を招いて行う「カスハラ対策の社内研修」も、対象となる取組の一つになり得る

ということです。

ただし、

「研修を1回受ければ、40万円がもらえる」 という制度ではありません。

ここが少しわかりにくいところなので、
今回は、東京都中小企業振興公社の登録専門家として中小企業支援にも携わる立場から、
できるだけわかりやすくご説明します。


Contents

2026年10月1日から「カスハラ対策」が義務化されます

2026年10月1日から、カスタマーハラスメントを防止するために必要な措置を講じることが、
事業主に義務づけられます。

つまり今後は、

「問題が起きたら、その都度対応する」

だけではなく、

会社として、カスハラに対する方針や判断基準、対応方法をあらかじめ整えておく

ことが大切になります。


特に現場では、

「これは正当なクレームなの?」
「それともカスハラなの?」
「どこまで対応すればいいの?」
「どの段階で上司に引き継げばいいの?」

と、判断に迷うケースも少なくありません。


すべての厳しいご意見やクレームが、カスタマーハラスメントになるわけではありません。

だからこそ、正当なクレームには誠実に対応し、行き過ぎた要求には毅然と対応するための“線引き”が
重要になります。


東京都の「40万円の奨励金」とは?

公益財団法人東京しごと財団の「カスタマーハラスメント防止対策推進事業」では、
一定の要件を満たす都内中小企業等に対して、

40万円の奨励金

が支給されます。

ここで注意したいのが、

「カスハラ研修の費用を最大40万円まで補助してくれる制度」ではない

ということです。

研修費が10万円だったから10万円、30万円だったから30万円、と支給される仕組みではありません。

カスハラ対策に関するマニュアルの整備など、制度で定められた要件を満たし、
さらに実践的な取組を行った事業者に対して、40万円の奨励金が支給される制度です。


では、何をすれば40万円の対象になるの?

わかりやすく整理すると、大きく3つです。

① カスハラ対策マニュアルを作成・周知する

まず、会社としてのカスタマーハラスメント対策マニュアルを作成、または改定し、
社内に周知する必要があります。

また、募集要項で指定されている必須項目を、マニュアルに盛り込む必要があります。

② カスハラに対する会社の基本方針を社内・社外へ周知する

作成したマニュアルの中で定めた、カスタマーハラスメントに対する会社の基本方針を、
社内だけでなく社外にも周知します。

社外への周知方法としては、店頭への掲示、自社ホームページへの掲載、
顧客への案内などが想定されています。

③ 実践的なカスハラ対策を1つ行う

さらに、次の3つのうち、いずれか1つの実践的な取組を行います。

  • 録音・録画環境を整備する
  • AIを活用したカスハラ対策システム等を導入する
  • 外部人材を活用する

この「外部人材の活用」の中に、外部講師によるカスハラ対策の社内研修が含まれています。


カスハラ研修も対象になるの?

はい。一定の要件を満たせば、対象になり得ます。

東京都の募集要項には、「社内研修等のためのスポット契約」として、

カスハラ対策のための社内研修等について、外部人材と新たに契約すること

が対象となる取組として明記されています。

想定されている研修には、

  • カスハラに関連する従業員のケア
  • 接遇
  • 条例等に関する研修

などがあります。

接客・サービス業はもちろん、医療・介護、店舗、施設など、日頃からお客様や利用者様と接する機会が多い事業者にとっては、検討しやすい取組の一つではないでしょうか。


ただし「研修を受けただけ」では40万円の対象にはなりません

ここは、とても大切なポイントです。

例えば、

「外部講師を呼んでカスハラ研修を1回行いました。これで40万円を申請できますか?」

というと、研修だけでは要件を満たしません。

先ほどお伝えしたように、

カスハラ対策マニュアルの作成・社内周知 会社の基本方針の社内・社外への周知研修などの実践的な取組

という一連のカスハラ対策が必要です。

また、社内研修を対象とする場合は、
事前エントリー時点ですでに研修を実施していることも要件となっています。

他社が主催する一般的なセミナーに社員が参加するだけでは対象外です。

自社が実施するカスハラ対策研修として、外部講師等と契約して実施することが想定されています。


個人事業主も対象になる?

ここも、意外と知られていないポイントです。

一定の要件を満たす個人事業主も対象です。

募集要項では、対象事業者として、

「都内で事業を営む中小企業等または個人事業主」

と明記されています。

個人事業主の場合には、例えば、

  • 税務署へ開業届を提出していること
  • 都内の事業所で継続して1年以上事業を行っていること
  • 都内の事業所で実質的に事業を行っていること
  • 税金の滞納がないこと

などの要件があります。

そのため、

「うちは法人ではないから関係ない」

と思っていた店舗、サロン、教室などの個人事業主の方も、対象要件を一度確認してみる価値があります。


申し込めば必ず40万円がもらえるの?

いいえ。申請すれば必ず支給されるわけではありません。

この奨励金を申請するには、まず事前エントリーが必要です。

令和8年度第1回では、事前エントリーを通過して支給申請に進める事業者は2,500社とされ、
エントリー件数が2,500件を超えたため、実際に抽選が行われました。

さらに、事前エントリーを通過した後に支給申請を行い、書類審査があります。

そのため、

事前エントリー=40万円の支給決定

ではありません。

なお、令和8年度は2回の募集が予定されており、第1回募集はすでに終了しています。
第2回募集の詳細は、決まり次第、公式サイトで案内される予定です。

制度の利用を検討される場合は、必ず最新の募集要項をご確認ください。


カスハラ対策で大切なのは「何でもお客様の言うとおりにすること」ではありません

私は長年、接客・接遇の現場や企業研修に携わる中で、

「お客様を大切にすること」と「何でもかんでも受け入れること」は違う

と考えています。

正当なご意見やクレームには、誠実に耳を傾ける。

一方で、行き過ぎた要求や暴言などに対しては、会社として基準を持ち、必要な場合には毅然と対応する。


そのためには、現場のスタッフ一人ひとりに、

「あなたの判断で何とかしてください」と任せるのではなく、

どこまで対応するのか。どの段階で上司へ引き継ぐのか。どのような場合に対応を打ち切るのか。

という判断基準を、組織として共有しておくことが大切です。


「これはクレーム?カスハラ?」と迷わない組織へ

カスハラ対策というと、どうしても「悪質なお客様への対応方法」に目が向きがちです。

しかし、本当に大切なのは、問題が起きたときに初めて考えるのではなく、

「会社として、どう対応するのか」をあらかじめ決めておくこと。

ではないでしょうか。

例えば、次のような状態になっていないでしょうか。

  • 正当なクレームとカスハラの違いを、現場スタッフが判断できない。
  • 担当者によって対応方法が違う。
  • いつまでも対応を続けてしまい、業務が止まってしまう。
  • 一部のベテラン社員や管理職ばかりに対応が集中している。
  • スタッフが一人で抱え込み、心身ともに疲弊している。

一つでも思い当たることがあれば、2026年10月の義務化をきっかけに、
社内のカスハラ対策を見直してみるタイミングかもしれません。


カスタマーハラスメント対策研修について

株式会社キャリア・ジョセフィーヌでは、
企業・団体様を対象に、カスタマーハラスメント対策研修を実施しています。

「これはクレーム?カスハラ?」と現場が判断に迷うケースや、

「どこまで対応するのか」
「どの段階で毅然と対応するのか」

といった実際の現場で起こり得るケースをもとに、

正当なクレームとカスハラの違い

判断基準

初期対応

対応フロー

対応を続ける・打ち切る判断

上司への引き継ぎ

などを実践的にお伝えしています。

カスハラ対策は、お客様を遠ざけるためのものではありません。

正当なお客様の声には、きちんと耳を傾ける。
そして、行き過ぎた要求からは働く人を守る。

その両方を大切にしながら、現場が判断に迷わない組織づくりを支援しています。


この記事を書いた人

関 優子
ホスピタリティ経営コンサルタント
株式会社キャリア・ジョセフィーヌ 代表取締役
東京都中小企業振興公社 登録専門家

日本航空国際線ファーストクラス客室乗務員として14年間勤務後、ホテルニューオータニでの勤務を経て独立。

現在は、企業・行政等を対象に、接客・接遇、ホスピタリティ、人材育成、クレーム対応、カスタマーハラスメント対策などの企業研修・コンサルティングを行っています。


※本記事は2026年8月19日時点の公表情報をもとに作成しています。制度内容や募集期間、対象要件等は変更される可能性があります。奨励金の申請を検討される際は、公益財団法人東京しごと財団「カスタマーハラスメント防止対策推進事業」の最新の募集要項を必ずご確認ください。

※当社のカスタマーハラスメント対策研修を受講することのみで、奨励金の支給が決定するものではありません。事前エントリー、対象要件、取組要件、申請・審査等があります。

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