「お客様から強く言われたけれど、これは通常のクレーム?それともカスハラ?」
現場でお客様対応をしていると、この判断に迷う場面は少なくありません。
特に、日頃から「お客様に寄り添うこと」を大切にしている会社ほど、
「どこまでお応えしたらいいのだろう」
「こちらにも不手際があったから、我慢しなければいけないのでは」
と、対応に悩むこともあるのではないでしょうか。
しかし、
お客様に寄り添うことと、一線を超えた要求まで受け入れることは同じではありません。
まずは、カスタマーハラスメントと通常のクレームの違いを知っておきましょう。
そもそも「カスタマーハラスメント」とは?
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」とは、
単に「お客様から厳しいことを言われること」ではありません。
カスハラを判断するときに大切なのは、
「何を要求しているのか」
そして、
「どのような方法で要求しているのか」
という点です。
顧客や取引先、施設利用者などからの言動のうち、
社会通念上許容される範囲を超え、それによって働く人の就業環境が害されるようなものは、
カスタマーハラスメントに該当する可能性があります。
電話やメール、SNS、インターネット上での言動も、内容によっては対象となります。
カスタマーハラスメントとクレームの違いとは?
通常のクレームとは、
商品やサービス、接客などに問題があった場合に、
お客様が改善や説明、商品の交換、適切な謝罪などを求めるものです。
もちろん、時には耳の痛いご意見をいただくこともあります。
しかし、正当なご意見やご指摘は、
会社にとって商品やサービス、接客を見直す大切なきっかけにもなります。
一方でカスハラの場合は、
要求内容そのものに妥当性がない
あるいは、
要求の仕方や態度が、社会通念上許容される範囲を超えている
といった点が問題になります。
たとえお客様側に不満を感じる理由があったとしても、
- 暴言を繰り返す
- 脅迫する
- 長時間拘束する
- 過度な謝罪を求める
といった行為まで受け入れる必要はありません。
例えば、こんなケースです
たとえば飲食店で、「料理に髪の毛が入っていた」というお申し出があったとします。
実際にお店側に不手際があったのであれば、まずはお詫びをし、
料理の交換や返金など、状況に応じた適切な対応が必要でしょう。
これは通常のクレーム対応です。
しかし、その後、
「気分が悪くなったから、帰りのタクシー代まで払え!」
「迷惑をかけたのだから、もっと補償しろ!」
など、発生した問題に対して著しく過大な要求を繰り返す場合には、
通常のクレーム対応の範囲を超えている可能性があります。
カスハラに該当する可能性がある言動
たとえば、次のようなケースです。
- 「ばかやろう」などの暴言や人格を否定する発言を繰り返す
- 「本社に行って暴れるぞ」などと脅す
- 「ネットで悪評をばらまくぞ」などと威圧する
- 同じ内容の電話を何度も繰り返す
- 店舗や窓口に長時間居座る
- 土下座など、必要以上の謝罪を強要する
もちろん、実際には一つひとつの状況を確認したうえで判断する必要があります。
だからこそ、現場の従業員一人ひとりに判断を任せるのではなく、
会社として判断基準を持っておくことが大切です。
最初から「カスハラだ」と決めつけない
一方で、注意したいこともあります。
お客様から少し強く言われたからといって、安易に
「これはカスハラです!」
と決めつけてしまうことです。
まずは通常のクレーム対応と同じように、お客様のお話を伺い、事実関係を確認します。
こちら側に不手際があった場合には、必要なお詫びをすることも大切です。
そのうえで、
できることと、できないことを整理する。
お客様のお気持ちには寄り添う。
しかし、できない要求まで受け入れない。
この線引きが、とても重要です。
「できないことは、できない」と伝える
カスハラ対応では、
「これ以上怒らせないようにしなければ」
という気持ちが先に立ち、相手の要求に応じてしまうことがあります。
しかし、その場しのぎで要求を受け入れてしまうと、
「もっと言えば要求が通る」
と思われ、その後の要求がさらにエスカレートする可能性もあります。
ですから、必要な場面では、
「申し訳ございませんが、そのご要望にはお応えできません」
「そのような言動はお控えいただけますでしょうか」
と、冷静に伝えることも必要です。
これは、お客様を大切にしていないということではありません。
むしろ、他のお客様や従業員を守り、適切なサービスを継続していくためにも必要な対応です。
「今すぐ決めろ」と言われても、その場で約束しない
特に気をつけたいのが、
「今すぐ答えろ!」
「ここで約束しろ!」
「一筆書け!」
など、その場で結論を迫られるケースです。
相手の勢いに押されて、担当者個人の判断で約束をしてしまうのは避けましょう。
そのような場合には、
「私一人では判断できませんので、責任者に確認いたします」
「大切な内容ですので、社内で確認したうえで回答いたします」
などと伝え、一度組織に持ち帰ることが大切です。
何度結論を迫られても、
「今ここでは判断しない」
という姿勢を持っておきましょう。
カスハラは「一人で対応しない」
人は誰でも、初めて経験することには不安や恐怖を感じます。
特に、目の前で大声を出されたり、強い言葉で責められたりすれば、冷静な判断が難しくなることもあります。
だからこそ、カスハラ対応は個人の経験や力量だけに任せてはいけません。
「何かおかしい」
「通常のクレームとは違う気がする」
そう感じた段階で、早めに上司や同僚に相談できる仕組みを整えておくことが大切です。
実際のカスハラ対策研修でも、具体例を扱っています
カスタマーハラスメントは、定義を知っているだけでは、実際の現場でとっさに判断するのが難しいものです。
そのため、株式会社キャリア・ジョセフィーヌのカスハラ対策研修では、
実際の現場で起こり得る具体的な事例を取り上げながら、
「これは通常のクレームなのか、それともカスハラなのか」を考えるケーススタディも行っています。
研修では「判断」と「対応」の両方を考えます
たとえば、
「どこまでお詫びをすればよいのか」
「どの段階で上司や責任者に交代するのか」
「その要求には応じてよいのか」
「お断りするとき、どのような言葉を使えばよいのか」
といった、実際の現場で迷いやすい場面を取り上げます。
単に「これはカスハラです」と答えを覚えるのではなく、
なぜそう判断するのか
そして、
その後、どのように対応すればよいのか
まで考えることを大切にしています。
カスハラ対策は、知識として「知っている」だけでは十分ではありません。
実際の場面を想定し、どう判断し、どう行動するのかを事前に考えておく。
それが、いざという時に従業員を守る大きな備えになります。
カスハラ対応で覚えておきたい3つのポイント
1.「何かおかしい」と感じたら、一人で対応しない
一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で上司や同僚と情報を共有します。
2.理不尽な要求には、その場で安易に応じない
自分一人では判断できないことについては持ち帰り、組織として対応します。
3.会社として対応方針や判断基準を決め、共有しておく
「どこからがカスハラなのか」
「誰に相談するのか」
「どの段階で対応者を交代するのか」
「どのような言動があった場合に対応を終了するのか」
などを、あらかじめ決めておくことが重要です。
カスハラ対策は「起きてから」ではなく「起きる前」に
災害対策と同じように、カスタマーハラスメントも、何かが起きてから初めて考えるのではなく、
事前にどれだけ準備しているか
によって、その後の対応は大きく変わります。
従業員が、
「こういう場合は上司を呼んでいい」
「これは会社としてお断りしていい」
「ここまでは私一人で判断しなくていい」
と知っているだけでも、現場で感じる不安は大きく変わります。
厚生労働省では「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」など、企業向けの資料も公開されています。
まずは、自社の対応方針や体制がどのようになっているかを確認してみることをおすすめします。
カスハラ対策、何から準備すればいい?
「必要なのはわかったけれど、実際には何から整えればいいの?」
という企業様も多いのではないでしょうか。
カスハラ対策では、方針を掲げるだけではなく、
- カスハラの判断基準
- 現場での対応フロー
- お客様への伝え方
- NGワードや対応例
- 社内相談のルール
- 従業員への周知
- 管理職や現場スタッフへの研修
など、
実際の現場で使える状態まで整えておくこと
が重要です。
関連記事
東京都のカスハラ対策や奨励金については、こちらの記事でもご紹介しています。
2026年10月からカスハラ対策が義務化|東京都の40万円奨励金、カスハラ研修も対象?

自社だけで準備するのが難しい企業様へ
株式会社キャリア・ジョセフィーヌでは、
カスタマーハラスメントへの備えを、
現場で実際に活用できる形に整えるための「カスハラ対策キット」をご用意しています。
- 「何を作ればいいのかわからない」
- 「一からマニュアルを作る時間がない」
- 「現場で使える対応フローや言葉まで整えたい」
- 「会社として判断基準を統一したい」
という企業様に向けて、カスハラ対策を進めるために必要な内容をまとめています。
企業様向けカスハラ対策研修も承っております
また、株式会社キャリア・ジョセフィーヌでは、企業様向けのカスタマーハラスメント対策研修も承っております。
研修では、実際の現場で起こり得る具体的な事例をもとに、
「これは通常のクレームなのか、それともカスハラなのか」
を考えながら、判断基準や対応方法を学んでいただきます。
単に知識を身につけるだけではなく、
「判断できる」 「対応できる」 「一人で抱え込まない」
状態をつくることを大切にしています。
カスハラは、いざ起きてから考えるのではなく、
起きる前に「どう対応するか」を組織で共有しておくことが、
現場の安心につながります。
最後に
カスハラ対策で大切なのは、ただお客様を拒絶することではありません。
正当なご意見には真摯に向き合う。
お客様のお気持ちには、できる限り寄り添う。
その一方で、
一線を超えた言動からは、従業員をきちんと守る。
そのために、会社として
「何を大切にするのか」
「どこまで対応するのか」
「どこからは毅然と対応するのか」
を事前に決めておくことが大切です。
お客様を大切にすることと、従業員を守ることは、どちらか一方を選ぶものではありません。
お客様にも従業員にも安心していただける環境をつくること。
それが、これからのカスタマーハラスメント対策に求められていることではないでしょうか。
一線を超えた言動には、個人ではなく、組織として毅然と対応する。
これが、カスタマーハラスメント対策の大切なポイントです。

