機内に一歩足を踏み入れた瞬間、目の前のお客様と視線が合いました。
長旅の疲れをにじませたその表情に、私は自然に微笑みながらお声をかけました。
“Welcome on board. We are delighted to have you today.”
(ご搭乗ありがとうございます。本日お迎えできて光栄です)
その一瞬で、お客様の肩の力がふっと抜け、柔らかな笑顔がこぼれました。
私は心の中で「歓迎のひと言には、人を安心させる力がある」と改めて感じたのです。
海外のお客様を迎えるとき、最も大切なのは「完璧な英語」ではありません。
必要なのは「あなたを歓迎しています」という心のこもった気持ちを伝えることだと思うのです。
私はJAL国際線ファーストクラスCAとして、そしてホテルニューオータニ幕張のフロントとして、
数えきれないほどの海外のお客様をお迎えしてきました。
そこで実感したのは、たった一言の“Welcome(ようこそ)”や、相手を気づかう小さなフレーズが、
相手の心に深く残るということ。
本記事では、私の経験談を交えながら「海外のお客様に歓迎の気持ちを届ける表現」と、その本質をお伝えします。
1. おもてなしの本質は「歓迎の気持ちをお伝えすること」
「おもてなし」という言葉は、日本独自の文化を象徴するものです。
英語に直訳できないからこそ、そこには特別な意味があります。
けれど、その本質をひと言で表すなら、“あなたを歓迎しています” という気持ちを相手に届けることだと思うのです。
国際線ファーストクラスには、世界中から多様なお客様がいらっしゃいました。
言語も文化も価値観も違います。
それでも共通していたのは、
「ここに来てよかった」「自分は歓迎されている」と感じるときに、安心した表情を見せてくださることでした。
あるヨーロッパからのお客様。長いフライトでお疲れのご様子でしたが、微笑みながら
“Welcome on board. We are delighted to have you today.”(ご搭乗ありがとうございます。本日お迎えできて光栄です)
とお伝えした瞬間、深いため息とともに表情がやわらいだのを今でも覚えています。
2. 実践で役立つ“歓迎のおもてなし”の3ポイント
① 最初のひと言に心を込める
ただの “Welcome”(ようこそ) だけでは、形式的に響くことがあります。
そこに
“I hope you have a wonderful stay in Japan.”(日本で素晴らしい滞在になりますように)
“I’m happy to see you today.”(本日お会いできてうれしいです)
とひとこと添えるだけで、お客様の表情が変わります。
あるフライトでは、乗り継ぎが18時間も遅れ、疲れ切ったお客様がいらっしゃいました。
私は目を合わせて微笑みながら、
“Welcome on board. You made it safely.”(ご搭乗ありがとうございます。無事にいらしてくださって安心しました)
とお声をかけました。
その瞬間、お客様は大きく息を吐き、ほっとした笑顔を見せてくださり、
“You don’t know how much I needed to hear that.”(今、その言葉を聞けて本当に救われました)
とおっしゃったのです。
心を込めた最初のひと言は、ただの挨拶ではなく「癒やし」や「支え」になることを、このとき強く実感しました。
② 文化を尊重することが最高の歓迎になる
日本航空時代、出発前にウェルカムドリンクをお客様お一人お一人にお出ししていたときのことです。
その日は国際会議やイベントで多国籍のお客様にご搭乗いただき、ファーストクラスは満席。
ある中東からのお客様に、うっかりシャンパンをおすすめしかけた私は、すぐに気づきました。
“Would you prefer juice or tea instead?”(代わりにジュースかお茶はいかがでしょうか?)
と切り替えると、お客様の表情がふっとやわらぎ、
“You understand. Thank you.”(理解してくださってありがとう)
と安堵の笑顔を見せてくださいました。
多くの中東のお客様はイスラム教徒であり、宗教上の理由からアルコールを召し上がらない方が少なくありません。
そのことに気づき、すぐに代替案を提示することで「自分を理解してもらえた」という
安心感につながったのだと思います。
その後、お客様はリラックスされた様子でフライトを楽しまれ、穏やかな笑顔を何度も見せてくださいました。
この経験から、文化的な配慮は単なるサービスではなく「歓迎の気持ち」を形にすることだと学びました。
③ 日本の丁寧さは世界で通じる歓迎のサイン
日本人が大切にしてきた「丁寧さ」は、世界中のお客様にとって特別な魅力です。
国際線ファーストクラスでは、サービスの最後に必ず
“It’s my pleasure.”(お手伝いできて光栄です)
と笑顔でお伝えしていました。
すると多くのお客様が、
“This is why I love Japan.”(だから私は日本が好きなのです)
とおっしゃってくださるのです。
決して難しい英語ではなくても、
笑顔+丁寧さ+誠意があれば、世界中の人々に「歓迎されています」という安心感を届けられるのです。
3. 経験から学んだ“歓迎の力”
私が学んだのは、サービス内容以上に「歓迎の気持ち」が心を動かすということです。
あるフライトでは、体調がすぐれないお客様に
“Would you like me to prepare a light meal for you?”(軽めのお食事をご用意しましょうか?)
とお声がけしました。
するとそのお客様は、目に涙を浮かべながら
“You really care about us. Thank you.”(本当に私たちを気づかってくださるのですね。ありがとう)
とおっしゃったのです。
また、ホテルニューオータニ幕張でのフロント勤務時代。
深夜に疲れ切ったご家族が到着されたとき、私は微笑みながら、
“Welcome to Japan. We are happy to have you here.”(日本へようこそ。ここにお迎えできてうれしいです)
とお伝えしました。
その瞬間、ご家族全員の顔に安心の笑顔が広がり、ロビー全体の空気までもがやわらいだことを覚えています。
歓迎とは、空間さえも変える力があるのだと、そのとき深く感じた出来事でした。
【まとめ】
- おもてなしの本質は「歓迎を伝えること」
- 完璧な英語よりも「状況に合わせたひとこと」が心に響く
- 挨拶+文化への配慮+日本的な丁寧さで、歓迎の気持ちは必ず伝わる
- 歓迎の言葉は、人の心を和らげ、信頼を育てる力がある
海外のお客様にとって「ここで歓迎されている」と感じる瞬間こそが、最高のおもてなしです。
そしてそれは、空の上でも、ホテルでも、ビジネスの場でも変わりません。
“歓迎のひと言”は、人と人をつなぐ架け橋になるのです。
FAQ(よくある質問&ワンポイントレッスン)
Q1. 英語が苦手でも歓迎を伝えられますか?
A. はい。笑顔や姿勢、そして「Welcome(ようこそ)」「It’s my pleasure(お手伝いできて光栄です)」
といった短いフレーズで十分です。
Q2. 接客業以外のシーンでも役立ちますか?
A. もちろんです。国際会議、商談、オンライン打ち合わせなど、海外の方と接するあらゆる場面で効果的です。
Q3. まず覚えるべき表現は?
A. 「Welcome(ようこそ)」「We are happy to have you(お迎えできてうれしいです)」
「How can I help you?(どのようにお手伝いできますか?)」の3つを覚えておけば安心です。
私が空の上で、そしてホテルで学んだ「歓迎のおもてなし」は、
単なる接客技術ではなく、人と人をつなぐ普遍的な力です。
その力を、研修やコンサルティングを通じて多くの企業や人材育成に役立てたい。
そんな思いから、私は キャリア・ジョセフィーヌ を立ち上げました。
国際的な場面での接客、異文化理解、そして日本ならではの丁寧さを融合させた研修は、
どの業界でも必ず活かすことができます。
もしあなたが、
海外のお客様をもっと歓迎できる組織をつくりたい
社員に自信を持って接客できる力を育てたい
グローバル時代に通用する“おもてなし”を学びたい
そうお考えであれば、ぜひ キャリア・ジョセフィーヌ にお声がけください。
あなたの現場に合わせた「実践的なおもてなし」をご一緒に育てていけたら幸いに存じます。



