笑顔が大切というのは、接客ではいうまでもないことかもしれません。
笑顔が自然に出てくる人は、それだけでお客様の信頼や支持を集めます。
でも、それがどれだけ大事なのかということをちゃんと理解している人は少ないと感じます。
何も、取って付けたような過剰な笑顔でなくて良いんです。自然で十分なんです。
ですが、笑顔を「つくること」というのは接客をしていてもなかなか難しいことのようで、
この事実に身をもって気づいたのは、ある都心のホテルのスタッフたちを見ていた時です。
新しいホテルができると、多くのお客様はそちらに流れてしまいます。
長期にわたって信頼され、応援されるためには、「サービスの質」を高めるのが一番です。
その中でも最も重要なのが、「笑顔」だったのです。
実は、そのホテルは、インターネットの口コミサイトでも、
たくさんのお客様から「笑顔がなくて暗い」とコメントされていました。
支配人が中心となり、「笑顔」をテーマに掲げ、スタッフ全員が笑顔をつくるように徹底していたそうです。
でも評判は、一向に良くならなかったらしく、それどころか、
「『笑顔の接客』、とホテルのメッセージパンフレットに書いてありましたが、とても無理をしているように感じました。」
とさえコメントカードに書き込まれてしまったのです。
笑顔は訓練です。
このホテルの改革に関わることになった私は、「笑顔は訓練です」と支配人に伝えました。
CA時代、練習しなくても素敵な笑顔ができる先輩や同期もたくさん見てきました。
でもそんな人は、本当に一握りなんです。
私も最初は、全く笑顔なんて出ませんでした。
だから、わかります。
なぜなら、多くの人にとって、仕事の場面で急に「ゆとりのある笑顔」というのはなかなか出てきません。
急に「笑顔になれ!」と言われても、なかなかその通りにはできないのです。
その背景には、緊張や日常のストレス、仕事のプレッシャーも、そして不安もあると思います。
そこで私は、「笑顔は訓練」というコンセプトを掲げ、
このホテルのスタッフたちに笑顔の実践練習をしてもらいました。
3日もあれば、笑顔のコツは掴めるものです。
3日間、鏡の前で笑顔をチェックをしていくと、どんな顔つきの時に美しく優しい笑顔に見えるのかが分かって来ます。
でも・・・。
「鏡の前で笑顔の練習をします。」と伝えると、誰でもイヤな顔をします。
そりゃそうですよね。
最初は、自分のこれまでの経験やプライドが邪魔して、なかなか冷ややかな反応です。(いつも汗、かいてます^^)
特に、何十年も働いてきたベテランのスタッフになればなるほど、
「なんで今さら笑顔の練習なんかしなければいけないの?」という拒絶反応を起こします。
そりゃそうですよね。でも、そこを受け止めつつ、コツコツとお伝えして、
やっていくうちにその意義に気づいてくれるようになります。
実際の訓練の様子は、こんな感じで進みます。
1日目。
最初はなかなか素直にはなれないものです。が、しばらくすると、徐々に鏡の前で笑顔を作り始めます。
それが数十分、数時間続くと、今度は笑顔を続けることの大変さを知るようになります。
今まで使ってこなかった筋肉を使うからなのか、感覚が麻痺してくるようです。
(でも、ほうれい線は目立たなくなりますよ^^)
2日目。
2日目にもなると、感覚の良い方は笑顔を作るコツをつかみ始めてきます。
グループに分かれ、笑顔の出し方についてお互いの感想を伝えていくワークも取り入れます。
ポイントは、独りよがりの笑顔になっていないか?自然な笑顔に見えるか?
感じの良い雰囲気を醸し出しているか?
などを他のメンバーから指摘されることで、
「いい笑顔だね」と言われるようになりかなり自信がつきます。(←脳科学・心理学も駆使して指導しています)
3日目。
いよいよ最終日。笑顔を単なる練習に終わらせず、本当に自分のものにしてもらうための最終の仕上げです。
一口に笑顔と言っても、微笑みのような笑顔もあれば、声を上げて大笑いもあります。
新人のような初々しい笑顔もあれば、信頼され安心感のある落ち着いた笑顔もあります。
最終日には、こうしたさまざまな笑い方をマスターして、いつも通り一辺倒の笑顔ではなく、
状況や相手に合わせた笑顔を作り出せるようになるのです。
こうした練習をマスターするだけで、誰もが笑顔を上手に出せるようになります。
ただ単に「笑顔を作れ!」というのではなく、実際にメカニズムを知って、訓練をすることで
人は見違えるような素敵な笑顔を作れるようになるのです。
実際問題、笑顔の練習はお金がかかりません。自宅でもどこでもできます。
ましてや今は、マスクをしているので電車の中でも通勤中でも、笑顔をつくる訓練はできます。
それを3日続けるだけで、今までとは全く違う笑顔になります。
ただし、訓練によって出せるようになった笑顔も、心のこもった笑顔には太刀打ちできません。
まずは、笑顔を出せるようにして、余裕ができてきたら、「心」からの笑顔を意識しましょう。
なぜなら心が楽しいと感じていれば、自然と笑顔になるからです。
笑顔でいると、脳が勝手に楽しい状況だと勘違いして、本当に気分まで楽しくなってくるから不思議です。
ちょっとした訓練で、笑顔は作れます。
最初は、つくっていたかもしれませんが、「心」が伴えば、あなたの笑顔は自然に溢れ、
必ずお客様の胸に響くものになるはずです。