接客の世界では、お客様が期待しているサービスを提供するのは当たり前。
期待を遥かに超えるサービスが求められています。
そして、お客様が満足しているかはアンケートを行い数値化されるため、
企業にとってもサービスパーソンにとっても、「顧客満足」を意識することは当たり前です。
何を提供することができれば「顧客満足」が高くなるのか。それは一概には言えません。
例えば、最初から高い接客スキルを期待していない場合もあります。
俗にいう「安売り店」。
スタッフはアルバイトばかりで、そもそも「おもてなしの心」を期待していない。
期待するのは安い価格。
そのような場合は、スタッフが正しい敬語を使えなかったとしても、お客様は不満を感じません。
ただし、それでも「人をナメたような態度や馬鹿にした態度」はクレームにつながります。
価格が安いから、と言って態度が悪くていいということにはなりません!
顧客満足は、質の高い接遇でお客様が感動するかが評価のポイントに捉えられがちですが、
職種によっては、このように「便利かどうか、低価格かどうか」が判断基準になることもあるのです。
では、CAの場合は?
では、CAの場合、接客スキルがズバ抜けていれば、顧客満足が高いのか?というとそうとは限りません。
私は、接客スキルが特別にズバ抜けて高かったわけでもありません。
特に、私のアナウンスのレベルチェックは惨憺たる成績でした。><
ところが、私はこのアナウンス業務に関して、何度かお客様からグッドコメントをいただきました。
記憶に残っているのは、ある大物政治家のT氏がお乗りになった時のこと。
私のアナウンスに対してメモをいただきました。
そのメモには、「今までで一番心に残ったアナウンスでした。ありがとう」と走り書きがありました。
お客様の席は前方で私は後方の担当。
降りる時にチーフにそのメモを渡したそうです。まったく信じられませんでした。
私は、滑舌があまり良くありません。
訓練生の頃、アナウンスの授業で教官に発音を指摘されて以来、機内アナウンスが苦手の一途に・・・。
苦手だと嫌いになり、ますます自信がなくなり、ついにはコンプレックスになりました。
しかし、仕事ですから、嫌でもアナウンスをしなければならず、日々練習を重ねました。
最後には、覚悟を決めて「スキルがなくても、お客様のために心だけは込められる!」と腹を括り、
一語一語に想いを込めて丁寧に機内アナウンスをしました。
練習のおかげか分かりませんが、グッドコメントという結果で、正直、報われたような気がしました。
その後も、「アナウンスを聞いているうちにすごく胸に響いて・・・、お礼を言いたくて降りるのを待ってたの」
とお年を召したお客様がわざわざ伝えに来てくださいました。
おいおい、どれほど素晴らしいアナウンスだったのか?!と思われるかもしれませんが、
季節の挨拶を入れ、その時にお客様が感じているであろう気持ちをほんの少し推測し、
エールを送るような言葉を最後に盛り込んだくらいです。
ただ、読み聞かせのように、ゆっくりと真剣に心を込めて伝えました。
こうした体験から、「接客スキルが完璧な人だけがお客様から満足されるとは限らない。
もっと大事なのは、接客に対する自分の思いや誠実な心なのかも」と考えるようになりました。
だからこそ、接客するキルが足りないのであれば、別の何かで補おうと、
自分に今できることでベストを尽くすように意識しました。
もちろん、スキルが低くていいという話ではありません。
「スキル」も「心」も両方大切ですし、どちらも諦めてはいけません。
今の自分ができることを考え、精一杯そのことにベストを尽くす。
同時に苦手なことから逃げないことが、ベストパフォーマンスを発揮するには必要なのではないでしょうか。
「顧客満足」と「接客スキル」はイコールではないのです。